長崎市は18日、同市賑町の中央公園内にある蒸気機関車(SL)の解体工事を始めた。SLは長崎原爆の投下直後にけが人を運んだ救援列車の存在を後世に伝えようと展示されていた。記憶継承に役立てたいとする西彼長与町からの申し入れを受け、車輪1対などを無償譲渡する。
SLは1939年製「C57型」で、長さ20・28メートル、総重量は115・5トン。救援列車をけん引した「C51型」の後継に当たる。73年の設置から年月が経過し、車体の一部に穴があくなど劣化が進んでいた。
町に譲渡するのは、直径1・8メートルの車輪1対のほか、車輪をつなぐ車軸と6メートル分のレール。市の解体方針を知った町は、救援列車の出発地となったJR長与駅周辺に展示しようと、1月に譲渡を市に要望。市側も「これまで展示してきた目的と合致する」として応じた。
17日は、業者が重機を使ってSLの後部から解体を進めた。工事は今月末ごろまでの予定という。
町の担当者は「被爆者の高齢化が進む中、『継承』はますます大切になる。目に見える形で残し、救援列車の存在を伝えたい」としている。一方、市も譲渡分とは別に、複数の車輪などを保管し、今後、活用策を検討するという。