東京五輪・パラリンピックの全日程が終了してから、5日で1カ月。
東京都内の臨海部の仮設競技会場などでは解体工事が急ピッチで進んでおり、「祭りの後」の雰囲気が漂っている。開催準備と運営の中心を担った大会組織委員会は、1日から大幅に態勢を縮小。
4日、自転車BMXやスケートボードの熱戦の舞台となった「有明アーバンスポーツパーク」(江東区)では、2台のクレーン車が仮設観客席の鉄骨を次々とつり上げ、解体作業を進めていた。
周辺の道路に人影はまばらで、敷地内は撤去された金属製の資材などが積み上げられ、物寂しい光景だった。
また、東京都世田谷区の「馬事公苑」は東京五輪・パラリンピックで馬場馬術などの会場となった。
1940年に開設され、64年の東京五輪でも馬術競技の会場になった。しかし施設の老朽化もあり、2017年から改修を開始。
9300人を収容する観客席と8本の大型照明など、五輪・パラのためだけの「仮設観客席」として建設した。
だが、首都圏は原則「無観客」となった。
観客席には一度も観客が座ることなく、大会が終わると照明塔とともに解体されることになる。
しかも、大会終了後は、仮設部分を解体した上で2期工事に取りかかるので、23年秋頃まで休苑になるという。
首都圏では原則無観客となったことで、馬事公苑のように一度も使用されないまま解体されることになる施設がある。
東京・お台場、五輪ビーチバレーの会場となった「潮風公園」(東京都品川区)もその一つだ。
1万2千人を収容する仮設スタンドなどが建設されたが、一度も利用されずに解体される。
東京五輪・パラ大会組織委員会によれば、こうした観客席など仮設設備関連の工事費は全国で計3890億円。
財源はいずれも税金だ。これだけの公金を使い、何か打つ手はなかったのか。
※AERA 2021年9月13日号より一部抜粋