◇措置の対象になる特定空家等とは?
空き家対策特別措置法には、「空家等」の定義 を「居住その他の使用がなされていないことが状態である建築物とその敷地」としています。
しかし、この表現は基準になっていないことから、概ね年間を通じて使用されていないことが、指針として打ち出されました。
また、特別措置法はすべての空き家を措置の対象にしておらず、次のように周辺への影響が大きい空き家を「特定空家等」と定義しています。
・そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
・そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
①特定空家等に該当するかどうかがカギ
明らかに特定空家等に該当する空き家を除くと、特定空家等の判断は市町村(実際には市町村に設置された協議会)がするので、所有者は判断を待つことになります。
基本的には、単に長期間住んでいないだけで管理された空き家は措置の対象外です。
ただし、市町村が空き家の現況を調査する際、問題がない空き家でも確認の連絡が来ることは考えられますし、特定空家等の予備軍だとみなされることも考えられます。
そうなると、空き家の管理について、何らかの回答を示さなければならないでしょう。
また、売却や賃貸を予定している空き家でも、売主や借主に引き渡すからには、管理されていて当然なので、売却や賃貸予定が管理責任を免れる理由にはなりません 。
もっとも、対策の一環に売却や賃貸を含める余地はあるので、自治体の対応次第です。
②特定空家等を売却中のときは?
買主に解体してもらう予定で、廃屋化した建物を放置して売りに出すことはよくあります。
この場合、やがて解体されるのですから、措置が講じられることはないように思えます。
しかし、現に売買契約が済んでいるならともかく、売れるかどうか不明な特定空家等を市町村が見逃してくれるとは考えにくいので、何か対策を求められるでしょう。
それでも、特定空家等の措置は一刀両断的ではなく、意見の聴取や措置までの猶予期間があるので、事情によって柔軟に対処してもらえる可能性はあります。
考え方によっては、解体費用の補助を受けて、実費負担以上の価格を更地に上乗せすれば、もしかすると解体した方がお得?かもしれません。
◇行政指導を避けるには管理・活用する
現在は問題ない空き家でも、やがては特定空家等に分類され、いずれ行政指導や命令の対象になることは避けられない問題です。
そして、人が住まない家は劣化が進みやすく、定期的な管理を必要とします。
これらを踏まえると、少しでも劣化を遅らせ、管理していることを市町村に示すために、管理代行サービスの必要性も認識されてきています。
月1回の巡回で1万円程度かかりますが、交通費にもならないほど遠隔地にある、または空き家への往復と確認の手間を考えれば、費用対効果は優秀です。
賃貸や売却も視野に入れて総合的な判断を
まだ使える家が残っているなら、賃貸することで借主が管理してくれますし、価格が下がる前に売却してしまうのも手です。
管理代行サービスは、一時的な引き延ばしにしかならないので、将来も見据えて空き家をどうするか考えるのは、所有者に突き付けられた課題です。
田舎では売主がなかなか見つからない点から、利益を出すつもりで売却を考えないこと、賃貸でも維持費をカバーできる程度の家賃で十分でしょう。
いずれにしても、現状を放置して事態が改善することだけはありません。
家には思い出が残っているので、なかなか思い切れませんが、残しておいても税負担が増える上に、強制対処となっては結局自己負担です。
早く手放すことで、周辺の同じような空き家との競合を避けられるメリットもあります。
また、解体して更地にしてしまえば空き家ではないのですから、所有者の管理責任は段違いに軽減され、同時に行政指導の対象から外れます。
特定空き家に該当すると思われる場合は、面倒なことになる前に、とりあえず補助を受けて解体しておくのも有効です。
空き家対策特別措置法について、少しは理解が進んだでしょうか?
世間で誤解されているような、空き家対策特別措置法=強制撤去ではありません。
特定空家等の判断やその措置は、市町村がどのような基準で判断するかに依存します。
同じ程度の空き家でも、その危険度や周辺の生活環境に与える影響が異なれば、必然的に自治体が取るべき措置や優先度が変わるということです。
したがって、空き家の所有者として、1回は行政に相談してみることをお勧めします。
行政としても、担当部署を作って対応していますし、所有者側からコンタクトを取ってくれれば、税金を使って調査する手間も省けるので、対処方法を教えてくれるでしょう。
なぜなら、市町村が空き家の所有者に対して、適切な管理を促進するための情報提供、助言等をすることは、法律で努力規定が定められたからです。
空き家の所有者を門前払いするような市町村は、逆にクレームの対象になります。
自分の空き家がどの状態にあるのか、行政に判断を任せることで、今後すべきことや将来どうなるのかを的確に聞けますから、その上で対応を検討するべきです。